上田市のサントミューゼで、週末劇場「長谷基弘ドラマリーディングワークショップ」が2019年4月27日(土)、28日(日)に開催されました。“2日間の演劇体験! 「戯曲」の読み解き方や、戯曲(=ドラマ)をアレンジして読む(=リーディング)などの演劇の基礎を体験します”というコンセプト。そういえば、ドラマリーディングの発表のためにワークショップを行うというのは珍しいかもしれない。講師は脚本・演出家の長谷基弘(劇団桃唄309、terrace)で、照明家の伊藤馨(terrace)、脚本家のサカイリユリカ(戯曲本舗)がお手伝い。高校生、高校演劇部の顧問の先生、地元の演劇人など9名が参加。実はこれ、8月16日から19日に開催する「日本劇作家大会2019上田大会」の関連企画として開催された。
まずは、講師陣も参加者もそれぞれが「上田の良いところ」を挙げつつ、自己紹介から。その後に、声を出すためのウォーミングアップとして身体を動かした。どういうふうに声を出すか、どんな声を出すのか、イメージを確認するような内容でした。
その後、谷川俊太郎さんの詩が書かれたプリントを渡され、それぞれが1行ずつを担当してリレー形式で読んでいく。ささやくようにできるだけ小さな声で。相手に届く声で。どういう温度で、直線的にぶつけるんじゃなくて網をかけるように柔らかい声で。
伊藤馨がどんどん距離を伸ばしながら、「手前で失速して落ちちゃったね」「いいよ、しっかり届いてきたよ」とアドバイス。声を届ける相手はさらに遠くなって、窓に向かってであったり、窓から見える山に向かってであったり、天井を突き破って宇宙に向かってであったり。改めて声をどういう形で届けるか、目に見えない言葉の形を手で作ってみたりもする。
さらに、劇場の鍵穴やコンセントの差し込み口に、
自分の手のひらに乗せるようにセリフを発してみる。
1行、1行がシチュエーションによって、変化していく。その意識を植え付けるようなひと時だった。
長谷の話はさらに深まり、ドラマリーディングとは何かという本質に入っていく。確かに、一番シンプルな形は戯曲を椅子に座って読むだけかもしれない。けれど、そこに込められた意図が深い。「いつでもどこでもできてしまう」「手軽な発表の場」「純粋に作品に触れる場」「作品を育てる場」「宿命的に完成品にはならないけど、完成品のイメージはできる」「劇作家にフィードバックを渡す」「戯曲は演劇の、関わる誰もが共通認識を持つための設計図」などなど。続いて戯曲の構造、仕組みについて「演劇は登場人物の行為行動に託して一切を描くと芸術である」「戯曲には舞台上で起きる行為行動が舞台上の時系列順に書かれている」「アクションは連鎖する」などなど。
参加者の皆さんも初めてそのことを意識したことだろう。
長谷の解説を意識した上で、今度はシェイクスピア『ハムレット』の冒頭を3人1組で読み合わせ、お互いに発表してみせて、この日のかリュキュラムは終了。繰り返しになるが、リーディングはただ戯曲を読むように見えて、なかなか奥が深い。その役割も重たい。
ちなみに2日目は、長谷が書いたオリジナルの短編戯曲が3本用意され、それぞれ配役を決めて練習し、講師や劇場関係者を観客に発表を行った。