限界集落、長野市中条にアーティストの秘密基地・中条アートロケーション ≪場≫オープン!

長野市の西部に位置する中条地区。ここは2010年1月1日に長野市に編入合併された旧中条村だったところで、古民家を利用したオープンな共同のアトリエスペースが2019年5月5日にオープンした。 その名も中条アートロケーション≪場≫。
1階はカフェ「美場viva」と、「始まり」をテーマに土や木を鋳型に融かしたアルミを流し込む原始のパワーにあふれる作品の一方、錫の酒器や器なども手がける金属造形作家の角居康宏の工房、2階は寺社に奉納する「大絵馬」を描いたり、また日本独自の思想や感覚と現代の発想や画法を融合した作品を生み出し続けている画家のOZ-尾頭-山口佳祐のアトリエとなっている。2階のもう一部屋は、中条での滞在制作を希望するアーティストにも貸し出しできるようになっている。



山に囲まれ、緑豊かな地域。というよりは緑の中に、集落がポツポツとあるといった感じか。中条アートロケーション≪場≫は長野市から大町へと向かう大町街道という幹線に面している。目の前を緩やかに流れる土尻川の水面はキラキラと輝いている。オープン初日を祝うように、この日、とてもよい天気だった。
“山側”という県内の面白そうな人や事を独自の視点で紹介しているサイトを運営されている大日方直樹さんと顔を合わせる。大日方さんは中条アートロケーション≪場≫がまだ改装が始まる前に行われたイベントの様子も取材されていて、その記事(こちら)には、中条アートロケーション≪場≫の未来を期待させるような(?)ユーモラスな光景が紹介されている(笑)。



カフェの監修は、花豆を餡にした鯉焼を善光寺そばで製造販売している藤田九衛門商店、藤田治さんで「一言でいえば『カフェ』だが、信州中条の食材を生かし、アートと自然の調和、都会と田舎が混ざり合うような和み空間」を目指したそう。壁は黒と白がバランスよく配置されて、ゆっくり落ち着消そうな雰囲気を醸し出している。展覧会も開けるようになっている。このへんは飲食店がないので、滞在したアーティストの食事や、地域の皆さんの憩いの場にもなればという期待もある。カフェのメニューはこんな感じ。



角煮定食も食べてみたかったが、「スミちゃん」の名前に惹かれてカレーを注文。スミちゃんとは、料理上手の角居の手による。善光寺付近に構えていた工房には、角居との会話と手料理を求めて、夜な夜なさまざまな人びとが集まっていた。ちなみにその工房の入ったビルは、信州大学工学部建築学科の学生と新たな展開を考えているとか。いずれにしても創作の拠点は中条になるという。



角居康宏が手がけた錫のピッチャーでいただく、お冷。お冷をいただくピッチャーが(おそらく日本一?)高価なのは、ここならでは(笑)。どうやら、グラスもいずれ角居の作品になるとか、ならないとか。そりゃあ生活の道具ですから使ってなんぼですもんな。



カレー、到着。サラダ付き。カレーに乗っているのは、鶏肉と菜の花、タケノコかな? うま、うま。見た目の完成度もさすがアートの拠点!



この日は、オープン初日とあって、花束を持ったお客さんなども入れ替わりでやってきていた。



お店を切り盛りするのは、マネージャーの石澤実菜美さん。《場》の運営ばかりではなく、アーティストのサポートも行っているそう。その代わり、忙しいお昼は角居も接客を手伝う。この日は、フォトグラファーの金井真一さんがお手伝いをしていた。



「僕らの個人的なネットワークで、ここに国内外さまざまなアーティストを招いて滞在制作していただくつもりです。この《場》がきっかけになって人口1800人の地域に5人くらいアーティストが移住してきてくれれば面白い動きが始まると思うんです」と角居。長野県にできた新たなアート拠点からきっと面白いことが発信されていく。