|美術展のつくり方 ver.1|

松本市美術館「細川宗英展」の場合①

 

松本市美術館では開館15周年を記念して、今秋「細川宗英展」を開催します。

日本の彫刻史に名を刻む彫刻家・細川宗英(1930~1994年)は松本市に生まれ、幼少期に諏訪に引っ越し、諏訪清陵高校を経て東京藝術大学で彫刻を学びました。松本市美術館にとっても重要な収蔵作家のひとりで、現在は松本市美術館3階の美術情報図書室前のスペースに、7作品が特設展示されています。
今度の展覧会は、細川作品のほとんどを収蔵する諏訪市美術館の全面協力を得て実現するものです。地域の作家にスポットを当てる企画をしたいなあという思いと、純粋に美術展はどういうふうにつくられるのだろうかという興味もあって、松本市美術館に協力していただくことに。

 

 

 「松本市美術館には開館前から《道元》(1972年)、《王妃像№1》(1984年)といった細川の代表作などを寄贈いただいており、主要な収蔵作家です。以前から企画展をやりたいということで何度も名前は挙がっていたんです。これまで小さな特集展示は常設展示室でやったことはあるんですけど、外部から作品をお借りして大々的に行う企画は今回が初めてになります。展覧会というのは何年か計画で準備をするものなんですけど、今年が松本市美術館が開館15周年でもありますので記念の年に合わせて顕彰しようということになりました」と語るのは担当の学芸員である大島武さんだ。
7月後半のある日、『日本のアニメーション美術の創造者「山本二三展」~天空の城ラピュタ、火垂るの墓、もののけ姫、時をかける少女~』のために来場した親子でにぎわう松本市美術館の裏側では細川作品の写真撮影を行っていました。伺ったのは全4日間のスケジュールの3日目でした。

 「細川については過去につくられた図録(信濃毎日新聞社発行)はあるのですが、もう20年以上前のものですから、フィルムなども残っていなかったんです。今回は作品を早めにお借りすることができたので、図録のための撮影が可能になりました。彫刻、ドローイングを含めて70点ほどの撮影を行っています。今日は大型の彫刻の撮影が中心。この撮影でどれだけいい写真が撮れるかで図録の出来も決まってきますので、そういう意味で重要な作業です。カメラマンさんは、諏訪市美術館でも細川作品を撮影した経験のある方にお願いしています

撮影用のロールバックの上に、美術品取扱専門員の方が4人がかりで慎重に運び入れては、カメラマンと大島さんが話し合い、何度も何度も彫刻の向きを微調整をしていきます。
面白いのは、搬入される作品は木枠で覆われているのですが、作品の形・サイズ・向きなどに合わせて作品ごとに組まれるのだそう。それはまた別の機会に。

 

 

 

細川宗英
1930年松本市生まれ。1938年、小学校2年生の時に父親の仕事の関係で諏訪市に転居する。諏訪清陵高校を卒業後、東京藝術大学美術学部彫刻科に入学、1956年に同大彫刻科専攻科を修了する。修了後は、同大彫刻科の副手や、跡見女子短期大学、すいどーばた美術学院での講師を務めながら展覧会に出品し、多くの受賞を果たす。主には、1956年の第20回新制作協会展における新作家賞、1965年の第8回高村光太郎賞、1972年の第3回中原悌二郎賞優秀賞など。1981年、東京藝術大学美術学部彫刻科の教授に就任し後進の指導も務めた。1994年、肝不全のため逝去。享年63歳。

 

松本市市制施行110周年記念・松本市美術館開館15周年記念
彫刻家・細川宗英展 人間存在の美
■会期|2017年10月7日(土)〜11月26日(日)
■会場|松本市美術館 企画展示室
■開館時間|9:00〜17:00 ※月曜休館(祝日の場合は次の平日)
■入館料|大人1,000円/大学高校生・70歳以上の松本市民600円
※前売券は各200円引き(10月6日まで)
■問合せ|松本市美術館 Tel.0263-39-7400

 

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