「菅井汲 - 疾走するイメージ -」展

菅井汲「ムッシュ」

「ここで車をやめたら負けやと思うんです。ですから、前のよりももっと速いやつを買うたんです。」
1967年の夏、愛車ポルシェでハイウェイを走行中に大事故を起こした画家・菅井汲は、九死に一生を得たわずか翌年に上記の言葉を残した。
食事は生きるために必要なことに過ぎないから、と3食決まったものしか口にしなかったという徹底して無駄をそぎ落とす生活ぶりも、親交のあった多くの人物たちによる驚きに満ちたエピソード。
日本とフランスを活動の拠点とし、生前から国際的に高い評価を受けた菅井汲。
作品は没後20年以上経った今もなお、色褪せない精彩を放ち私たちを魅了する。
60年近くに及ぶ画業の中で、その作風は何度も大きな変貌を遂げました。
初期の精緻な筆致で描かれた東洋的なモチーフは、1950年代後半になると次第にヴォリュームのあるシンプルなフォルムへと移り変わっていった。
1962年以降に展開された「オートルート」シリーズに見られる幾何形体は、時代とともに色彩やマチエール、造形要素の規格化が進み、さらに道路標識を思わせるフラットで記号性を帯びたスタイルが誕生した。
そして1980年代、限られた色彩と筆触を用いた構成により、それまで無機質だった画面に再び絵画性が与えられるようになる。

本展では、生涯探求を続けた様式の一部を紹介する。
冒頭の一節、「車」ということばを「絵」に置き換えてみるとしたら?
スピードをこよなく愛した菅井汲は、創作においても絶えずとどまることを知らず、前だけを見て走り続けた。
同じモチーフを反復し組み合わせること、余計なものを捨て去った単純明快なイメージ。画家は、生きること、描くこと、走ること、すべてにおいて「菅井汲」でありたいと願い、全うしたように思える。
本展では、1940年代から1980年代までの作品20余点を通して、眼前を過ぎ去った疾走の残響を体感できる。




インフォメーション

日程2017年4月27日(木)〜11月23日(木・祝)
会場軽井沢現代美術館
時間10:00〜17:00/火・水曜休館(GW及び、夏期は無休)
チケット料金大人 1,000円/65歳以上・大・高生 800円/中小学生 500円/未就学児 無料 ※お茶のサービスあり
詳細ホームページhttp://moca-karuizawa.jp
お問い合わせ先軽井沢現代美術館 Tel.0267-31-5141