【開館20周年記念 Ⅰ】奈良美智がつくる  茂田井武展 夢の旅人

「セロひきのゴーシュ」(福音館書店)より(1956年)

戦後の混乱期の子どもの本におびただしい数の絵を描きながら、
日本の絵本の隆盛期を待たずに早逝した茂田井武。
その画業は大切に受け継がれ、後に続く多くの画家たちにも影響を与えてきました。
茂田井が亡くなった3年後に生まれ、
今まさに現代美術のアーティストとして世界的に活躍する奈良美智も、茂田井の絵に心ひかれるひとりです。
本展では、奈良美智が今も「新しい」と感じる茂田井武の作品を選び、展覧会を構成します。

茂田井は子どものころの記憶や、欧州の旅での印象、夢のなかの光景などを、
まるで印画紙に焼き付けるように絵にしました。
時を経るごとに想い出の映像が「その時そのまゝの不死の姿」*に近いものとなってゆき、
朦朧とした輪郭から鮮明度を加えていく――「現像液の中で印画紙を揺すぶっているようなもの」*だと、
茂田井は自分の絵について語っています。
奈良はそうした絵から、おじいさんの子どものころの写真をひきだしから見つけたようなノスタルジーを感じるといいます。
*「印象のレンズ‐私の描きたい絵‐」 『教育美術』1952年5月号より

狭い画室に貼られていたという童話やおもちゃの絵、「父と子のノート」と題した合作のノート、
描き損じの裏に子どもが描いた絵まで、茂田井は大切に手元に残していました。
子どもとの濃い時間のなかで生まれたそうした絵を、奈良は愛おしそうに選び出しています。
「人に見せるための絵よりも、自分との対話のなかで生まれる絵にひかれる」という奈良は、
ほかにも夢から生まれた絵物語や戦時中の日記など、折々の茂田井の内面が色濃く表れた作品を選んでいます。
奈良美智の視点から、新たな茂田井武の魅力が開かれます。


「白くまとお人形」(1947年


【関連イベント】

ギャラリートーク「奈良美智がつくる 茂田井武展 夢の旅人」
日時◉4月8日・22日(第2・4土曜日)14:30~
会場◉展示室4
参加費◉無料(入場料別)
申込◉不要




インフォメーション

日程2017年3月1日(水)~5月9日(火)
会場安曇野ちひろ美術館 展示室4
時間9:00〜17:00 ※4月29日(土)〜5月7日(日)は18:00まで/3月22・4月12・26日は休館
チケット料金大人800円/高校生以下無料 ※団体割引あり
詳細ホームページhttp://www.chihiro.jp/azumino/
お問い合わせ先安曇野ちひろ美術館 Tel.0261-62-0772