伊那に棲む日々 LIVE in INA ①

『地芝居の持つパワー』

 もともと演劇や音楽をライブで見るのが大好きで、11年前に長野に来てからもちょくちょく何かしらのライブの場に足を運んでいます。その『ライブの場』が持っているパワーで体と心を自然と活性化しているのかもしれません。私の生業である東洋医学では、体の中をエネルギー(『気』と便宜上呼んでいます)がぐるぐるめぐっているのが健康で、「滞りがあると不健康」、と考えておりまして、そうなったときは体や心にいろいろな刺激を受けることによって巡りをよくし、健康を取り戻すのです!(ツボ刺激だけではないのです)

 もっぱら観客専門なのですが、地域のツボ刺激とでも言いましょうか、楽しくなれる場を作り出すお手伝いの側に回っているものもいくつかあって、伊那市長谷中尾の『中尾歌舞伎』もそのひとつです。中尾歌舞伎は、江戸時代に四国から来た旅芸人が神社の前で演じたのをきっかけに中尾集落の住民たちが守り伝えてきたものです。太平洋戦争のあとしばらく途絶えていましたが、地元の若者たちが復活させ、現在では中尾にとどまらず伊那市内外からも役者・裏方が集まりひとつの舞台を作り上げています。

 11年前の春、当時の上伊那郡長谷村に移住することが決まった日に役場の人たちに連れられて足を運んで以来…物語の持つ力や様式美、おひねりや大向こうのイベント性もさることながら、顔見知りの○○さんがきれいに着飾り化粧して弁慶や姫になる非日常の昂揚感、その場の空気に巻き込まれた観客の一体感…などなどに不思議と魅かれるものがあって、今では裏方として化粧やブログの更新、時々大道具などお手伝いしています。役者や観客とはちょっと違う喜びがまたイイんですよね。 

 長くて寒い冬が終わり、雪も解け、名高いタカトオコヒガンザクラも盛りを過ぎて田畑の豊作を願う春祭りの日。そして、じりじりと照りつける太陽の日差しも弱まり、田の神さまに実りを感謝する秋の日。中尾歌舞伎は晴れて上演の日を迎えます。奥ゆかしい山里の小さな芝居小屋がこの日ばかりは熱気であふれ、まさに祭りというパワーがそこに生まれます。

 昨日は秋公演に向けたミーティングがあり、子役さんをフィーチャーした演目はどうか、という話になりました。今までもいくつかやっていますが、子役さんが出ると、一言しゃべっても拍手、一歩歩いてもおひねり、と、たいへん盛り上がります。キャスティングも含めて、私もとても楽しみです! 多くの方に訪れていただき、人の『巡り』をよくしていければなあ、と思う今日このごろです。

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