長野A(アート)ターン#08 わたしの身近な東京〜長野をつなぐArt〜ハンドメイドインジャパンフェス 2016のなかの【岡谷ブース】-

わたしの身近な東京-長野をつなぐArt
ハンドメイドインジャパンフェス 2016のなかの【岡谷ブース】



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 日本最大級のクリエイターの祭典《ハンドメイドインジャパンフェス 2016》が、
2016年7月23日・24日の2日間、東京ビッグサイトにて開催された。
ちなみに、去年のこの祭典への来場者数は約53,000人と、わが岡谷市の人口とほぼ同じ。


 そんな符合があったからではないけれど、
今回この祭典に【岡谷ブース】が登場した。
黒い色調のシックなブース。市町村ブースはおそらく、【岡谷ブース】が唯一だということだった(一覧はこちら)。


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 このブースには、おかやシルクの製品と、そのシルク生地×岡谷出身の童画家・武井武雄が大正時代につくった花や鳥のモチーフを刺繍した、ブローチづくりのワークショップ。
さらに、『シルクファクトおかや(蚕糸博物館)』の映像、『イルフ童画館』の貴重な資料(武井武雄の刊本作品の現物)も、お目見えした。


イルフ童画館ボランティアメンバーのわたしは、東京ならば是非とばかりにお手伝いに馳せ参じたものの、
よりにもよってお題は苦手な裁縫。
しかも刺繍ということで、針と糸を使わない部分でのお手伝いをすることになった。


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 広い会場内。見渡すかぎり、数多の<ものづくり>そして<ワークショップ>。
その中でも<最短で40分程度>というこの刺繍ブローチづくりワークショップは、かなりハードルが高いような気がした。


 実際、声をかけても、「気になるけど、時間ないのよ」「目がほら、老眼だから」と逃げられることがしばらく続き、このワークショップ大丈夫かなと、かすかな不安がよぎる。
が、そうこうしているうちに、一人が立ち止り、座り、そしてまた一人が座り・・・とポツポツと人が集まりはじめ流れができた。
白・黒・グレーのおかやシルクの艶やかな生地と、鳥・花など3つの武井武雄モチーフを選び、糸を選び、枠に布をはめて刺繍タイムがはじまる。


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 イルフ童画館学芸員・齋藤正惠さんによる、神のような、千手観音のような、
数人同時且つノン・ストップの刺繍レクチャーに驚嘆しつつ、

ひっきりなしのお客さまといろんな話ができる機会は、貴重だった。
参加してくださる人たちの作業をみていると、そこには‘手づくり’を通してのストーリーがあった。


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 小学校低学年くらいの女の子を連れたお母さんがいらした。
最初はその子が「自分でやってみる」ということで始めたのだが、
結局ママがお手伝い。

ところが、ママがおトイレで席を外した間に、
おもむろにその子が頑張りはじめた。
これには戻ってきたママもびっくり。
ママと二人でつくったそのブローチは、彼女の水色ワンピースに
とても似合っていた。


 同じく、本人が「やりたい」ということで
参加した高学年くらいの女の子。
お母さんは他のワークショップを同時に予約していたためほとんど席をはずしていたが、

彼女の集中力は相当なものでとうとう100%自力でブローチを仕上げてしまった。

ブローチを手にお母さんの元へ戻った彼女がしばらくして、お母さんを伴い戻ってきた。

お母さんはわたしたちに、ニコニコしながら、そしてすこし目を潤ませながら
「本当にありがとうございました」と挨拶をするためにわざわざ戻って来て下さったのだった。
 
和刺繍をやっているという女性もいらっしゃった。
「和と洋では勝手が違うのよ」とおっしゃりながらも、
丁寧に、時間をたっぷりかけてブローチを仕上げられ、大切に手に持って帰られた。
和の色合いの素敵なブローチに仕上がっていた。


なかには
「武井武雄の本が好きなんです。刺繍はそんなにやったことないけど、是非お願いします!!」と
わざわざこのブースを目がけて来てくださる方もいた。
そして手を動かしながら、初対面の隣の方と談笑している。
こんなふうにごく自然に、知らない人と語り合える場がここにあったということは驚きだった。


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 ところで。後半になって、なぜか台湾のお客さまが多くなった。
終わりの頃には、二組の台湾のお客さまが登場。

そのうちの一人が、7歳半のヴィヴィアンちゃん。
見るからに勝気な彼女は、
最初から「一人でやる」といって
むずかしい鳥モチーフにチャレンジしたものの、
途中で、惜しくもタイムアウト。
一瞬彼女はとても悔しい顔をしたが、齋藤学芸員のお助けにより、彼女のブローチは完成。無事、お国に持ち帰ることができた。



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 一つひとつの刺繍ワークショップの写真を見返すと、まだまだたくさんのお客さまのストーリーがある。


‘手づくり’って、ものをつくるだけじゃない。
そこには、会話があって、交流があって、ぬくもりがあって。
武井はそんなことに気づいていて、『武井武雄手藝図案集』をつくったのだろうか。


 あともう一つ、この日驚いたこと。
「岡谷って、シルクのまちなんですね」
と、何度も言われた。
わたしたちは当然と思っていたことが
そうではなかったことに、今さらながら気が付いた。


 こんなふうにソフトに、‘わがまち岡谷’を知ってもらうのも、また岡谷を外から見つめられるのも、いいな。
そう思った日だった。


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<コラム中のことば説明>
HandMade in Japan Fes


岡谷蚕糸博物館シルクファクトおかや
この2016年8月1日でリニューアル開館2周年を迎えた。館内には現在でも製糸業を営む宮坂製糸所実働所があり、生糸がつくられていく過程をみたり、体験すうることができる。


イルフ童画館
岡谷市にある武井武雄作品を中心に収蔵する童画美術館。館内の心地よい木のスペースや喫茶で行われるワークショップが秀逸。


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