『長野A(アート)ターン』②

不忍画廊主・荒井裕史さん(左)と、同会長・荒井一章さん(右)

「わたしの身近な東京のNagano Art その1」


 今ちょうど、展覧会の連動企画をほんの少し、お手伝いさせていただいている画廊があります。日本橋にある不忍(しのばず)画廊さんです。その名のとおり、もとは上野の不忍池附近にあったのだそうですが、現在は、日本橋髙島屋のおとなりに位置しています。春は<桜通り>と名付けられた沿道の桜を眼下に愛でることができる、お江戸の中でもとても心地のよい場所です。



 わたしがこの画廊さんにたどり着いたのは、岡谷出身の芸術家、武井武雄のご縁。といっても、武雄先生はとっくに他界しておられますので、実際ご縁をつくってくださったのは、その作品を主に収蔵するイルフ童画館ということになります。
 昨年2014年、イルフ童画館では、武井武雄生誕120年記念展を全国に展開、そのスタートの地がまさに日本橋髙島屋でした。同じ日本橋にある拠点 Creative Hub 131 で活動しているわたしは、僭越ながらその展覧会のプレ・イベントを企画したのですが、そのことをどこかでお知りになって、「うちでも武井武雄の刊本作品を扱った『本の芸術』展をやりますよ」、とお知らせ下さったのが不忍画廊さんでした。


 そんなきっかけで訪れるようになった不忍画廊さん。まず驚いたのは、画廊会長の荒井一章さんが長野市出身であり、しかも高校時代、池田満寿夫さんと机を並べておられたこと。しかも彼の初の個展は、この不忍画廊さんだったことでした。東京の老舗画廊の1つである不忍画廊さんが、まさかこんなにも長野に深い縁をお持ちとは!
 その方のご子息で、今の画廊主の荒井裕史さんは、「近代と現代、地域と東京をアートでつなぐ」という明確な視点をお持ちです。例えばそれは、どなたでも知っている作家(美術家)さんと、その作家さんを思慕して美術界に入った若手作家さんとの組み合わせによる展覧会などのかたちでよくあらわれています。
 だからこの画廊では、よく知っている作家さんの展覧会であっても、いつでも楽しい発見があります。そして、ハッと感じた発見のうえからさらに、画廊主・荒井さんがさりげなく、その作家さんの人となり、制作のなかでのエピソードなどをスパイスのように付け加えてくれるのです。


 そういえば。
 先日、この画廊さんが共催されたパークホテル東京(汐留)の[YOKAI TOUR NIGHT]という、妖怪(YOKAI)をモチーフとしたアート作品×パフォーマンス×ホテル空間のイベントで、パフォーマーアレンジをお手伝いさせていただきましたが、画廊という枠から飛び出した作品や作家さん方が実に生き生きしていることに、圧倒された企画でした。


『YOKAI TOUR Ⅱ展での妖怪のプロジェクションマッピング』(パークホテル東京)

『YOKAI TOUR Ⅱ展での妖怪のプロジェクションマッピング』(パークホテル東京)

 老舗の画廊でありながら、決してその位置に安住なさっていないところがまた、面白く、惹きつけられます。


 今回、告知等のお手伝いをさせていただいている【瞽女/GOZE 斎藤真一と野田雄一 GLASS WORKS】展連動企画、<女優金澤碧 ひとり、かたり-斎藤真一の描いた女性たち->もまた、そんな不忍画廊さんの真骨頂の企画。斎藤真一や野田雄一という作家たち、そしてその作品を知らない方がたに知ってもらうきっかけをつくりたい、という画廊さんの思いの詰まった企画です。どんなふうに、どんな人たちに伝えたら興味をもってもらえるだろう・・・まるで博物館学芸員の実習のような感じで、わたしもあれこれ考えてさせていただいています。


 不忍画廊。日本橋髙島屋のおとなりでもあり、徒歩数分で東京駅にも出られる便利な場所にあります。画廊さんが入っているビルの1階には、昭和27年創業の『カフェげるぼあ』という昭和の純喫茶があり。画廊でゆっくりアート観賞し、この喫茶店で珈琲などいただきながら、買い求めた画集など眺める・・・調和のいい空間が、そこにはあります。



[mikibar用語集]


不忍画廊(しのばずがろう)
1960年、上野の不忍池端にて開廊。長谷川利行、中村正義、斎藤真一、池田満寿夫、駒井哲郎など近現代美術(日本画・洋画)や現代版画などの本格派の作家を紹介する画廊としてスタートする。1979年東京駅八重洲口に移転し、2012年9月、旧ビルの建替えに伴い日本橋に移転、現在に至る。50年以上紹介し続けている前述作家に加えて、2000年以降のアーティスト(會田千夏、池田俊彦、門坂流、呉亜沙、作田富幸、鈴木敦子、二階武宏、藤浪理恵子、安元亮祐、山田純嗣等)を約1ヶ月間の新作・企画展で定期的に継続開催。またアートフェア出展や、ホテルや企業ギャラリーでの企画展立案でアーティストの発表・活動をサポートしている。[東京都中央区日本橋3-8-6 第二中央ビル4F
東京メトロ・日本橋駅直通、日本橋髙島屋南出口(さくら通り)徒歩30秒] 公式HP  http://shinobazu.com/

≪これからの展覧会とイベント≫
■【瞽女/GOZE 斎藤真一と野田雄一 GLASS WORKS】展
(2015/9/4-9/19、日祝休、11:00-18:30)
■上記展覧会連動イベント
<女優 金澤碧ひとり、かたり-斎藤真一の描いた女性たち->
(2015/9/6(日)15:00-17:00頃、入場おひとり1,500円)


イルフ童画館(いるふどうがかん)
「童画」という言葉をつくったと言われる、童画家・造本作家・版画家・郷土玩具コレクターの武井武雄作品をコレクションする美術館(岡谷)。毎週末のワークショップ(ほぼ無料)は、学芸員さんやサポーターの皆さんのすてきなアイデア満載で毎回内容が異なり、子どもだけでなく大人も楽しめるようなものとなっている。本当に、近くに住んでいたら毎回参加したいものばかり。併設の喫茶ラムラムのスタッフが作る、企画展作品をイメージしたスイーツも見(食べ)逃せない。
公式HP http://www.ilf.jp/

≪これからの展覧会とイベント≫
■ミロコマチコ絵本原画展「きいろいたいよう」
(2015/7/10-9/14、水休、10:00-19:00)


Creative Hub 131(くりえいてぃぶはぶいちさんいち)
2011年7月16日にオープンしたCreative Hub 131は、日本橋大伝馬町という、東京のなかでも江戸時代初期からつづくエリアに建つ古いビルを改装し、自主的な責任とリスクによってインディペンデントに運営されている場所。
公式HP http://1x3x1.jp/


パークホテル東京(ぱーくほてるとうきょう)
ホテルでアートを楽しむことができるDESIGN HOTELSに東京で初めて登録されたホテル。四季にあわせた日本のアートを展示する<アートカラーズ>、アート作品をイメージしたフード、世界に1室のアーティストが手掛けた<アーティスト・ルーム>や、高さ約30mの壁面に毎夜映し出される作品のプロジェクション・マッピングなど、思いおもいにアートを楽しみくつろげる空間。
公式HP  http://parkhoteltokyo.com/


『YOKAI TOUR NIGHT での阿部清子氏によるライヴ・ペイント』(パークホテル東京)

『YOKAI TOUR NIGHT での阿部清子氏によるライヴ・ペイント』(パークホテル東京)

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