「ルック・オブ・ザ・サイレンス」

画像提供:松本CINEMAセレクト

 虐殺で兄が殺害された後、その弟として誕生した青年アディ。彼の老いた母は、加害者たちが今も権力者として同じ村に暮らしているため、半世紀もの間、亡き我が子への想いを胸の奥に封じ込め、アディにも多くを語らずにいた。2003年、アディはジョシュア・オッペンハイマー監督が撮影した、加害者たちへのインタビュー映像を目にし、彼らが兄を殺した様子を誇らしげに語るさまに、強い衝撃を受ける。「殺された兄や、今も怯えながら暮らす母のため、彼らに罪を認めさせたい―――」そう願い続けたアディは、2012年に監督に再会すると、自ら加害者のもとを訪れることを提案。しかし被害者家族が加害者たちに正面から対峙することはあまりに危険だ。眼鏡技師として働くアディは、加害者たちに「無料の視力検査」を行いながら、徐々にその罪に迫る。彼らの言葉から浮かび上がるのは、“責任なき悪”のメカニズム。そして母も知らなかった事実が明らかにされてゆく。半世紀もの間、恐怖によって“沈黙”を強いられてきた被害者たちの想いが、いまあふれ出す…。


 この映画は、1965年9月30日深夜にインドネシアで発生した「9・30事件」後の大虐殺を描いたドキュメンタリーである。大統領親衛隊の一部が、陸軍トップの6人将軍を誘拐・殺害し、革命評議会を設立したが直ちに粉砕されたというクーデター未遂事件は、それだけでは終わらず、未曾有の大混乱をインドネシア社会に呼び起こした。9・30事件そのものは未だにその真相が明らかになっていないが、当時クーデター部隊を粉砕し事態の収拾にあたり、その後第二代の大統領になったスハルト少将らは、背後で事件を操っていたのは共産党だとして非難し、その後の1、2年間にインドネシア各地で100万とも200万ともいわれる共産党関係者を虐殺した。それに対して、日本や西側諸国は何ら批判の声を上げることなく口をつぐんだのであった。それまで、容共的なスカルノ大統領のもとでインドネシア共産党は350万人もの党員と、傘下に多くの大衆団体をかかえる有力な政治勢力のひとつであった。しかしかねてからそうした状況を快く思っていなかった陸軍はその力を削ぐ機会を伺っており、この9月30日の事件を口実に弾圧に動き出した。とはいえ、当時共産党は合法政党であったから、国軍が前面に出るのではなく、イスラーム勢力やならず者など反共の民間勢力を扇動し、密かに彼らに武器を渡して殺害させたのである。ごく普通の民間人が武器を握らされ、国軍からにわか仕立ての訓練を受けて殺害に手を染めた。イデオロギーの違いから近隣の者はおろか肉親にさえ手をくださねばならない場合もあった。スハルトによる新体制が確立した後の1973年に、この一連の虐殺の中で共産主義者の命を奪ったものに対しては法的制裁が課されないことが検事総長によって正式に決定されたが、その記憶は多くの人にとってトラウマとなって残っている。

公式サイトより引用


監督/ジョシュア・オッペンハイマー(アクト・オブ・キリング)
2014年  103分
デンマーク・フィンランド・インドネシア・ノルウェー・イギリス合作
配給/トランスフォーマー
(C)Final Cut for Real Aps, Anonymous, Piraya Film AS, and Making Movies Oy 2014

インフォメーション

日程2015年8月28日(金)・8月29日(土) 
会場松本市中央公民館Mウイング6階ホ—ル
時間8月28日(金)①13:00 ②19:30、29日(土) ①10:30
チケット料金前売券 1,400円/メール予約(2日前)1,500円、当日1,800円/大学・高校生1,400円
詳細ホームページhttp://www.cinema-select.com/
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