[ようこそ、信州へ #002]大島花子さん

[聞く/entre+voir -3]大島花子さん


伝えたいことがあるからわたしはうたう。
そして、受け取ってくださる方がいるから「歌」になる。


国民的歌手だった故・坂本九さんの長女で、舞台を中心に活動するも「自分の言葉」でうたいたいと歌手を志し、自ら曲を作り、アコースティックにこだわるライブを続けている大島花子さん。一口にライブと言っても、その思いは多岐にわたる。出産を機にはじめた親子ライブ、国際協力NGOジョイセフの妊産婦支援、被災地支援活動、東北でのライブ、老人ホームや障がい者施設、ホスピタルコンサートなどなど歌を通じたふれあいを積極的に展開している。父のおなじみの楽曲をはじめ、命の美しさ、平和の尊さ、絆の大切さを訴える曲、客席と一緒に手話を交えて歌う曲、笑える曲、泣ける曲などなど、大好きな家族と共に過ごしているような心あたたまるコンサートは、老若男女を問わず好評を博している。そんな彼女が、八ヶ岳高原音楽堂でライブを行うことに。八ヶ岳の自然、澄んだ空気に溶け込んだ澄んだ歌声に、癒されるお客さんたちの顔が目に浮かぶ。



ーーお父様の事故から30年になるそうですね。30年というのは相当に長い時間ではありますが、お父様の曲が今もすたれずに歌い継がれている理由はなんだと思いますか?
 1つは楽曲の素晴らしさかと思います。「上を向いて歩こう」の中村八大さん、そして「見上げてごらん夜の星を」のいずみたくさんという才能と情熱あふれる作曲家、そしてそこに永六輔さんのシンプルだからこそ胸に残る言葉が重なった。そんな名曲と父が出会えたこと、ではないでしょうか。
 2つめは父の歌声の持つ魅力です。身内なので手前味噌になりますが、父の声、グルーブ感、あたたかさ。わたしが小学3年生くらいのとき、家でカラオケをやっていたんです。お友達が来ていて、父もいました。ある女性がうたったときに父が「○○ちゃんの歌はいいね〜」と言ったんです。わたしはすでに父は歌手だという認識がありましたから、そんなプロである父が「いい」と言ったことに強い興味を持ちました。ちなみにわたしはその女性の歌が、プロが褒めるほど上手だとは感じませんでした。父になぜ「いい」と思ったのか聞いたところ「だってなんかあたたかいじゃない。心でうたっているんだよきっと」そんなような言葉が返ってきました。父から歌について直接教えてもらうことはありませんでしたが、このときの出来事はいまでもわたしが歌と対峙するときに思い出す言葉です。ですから、父自身も「ハートで」歌をうたっていたのかなと考えるのです。
 そう、こんなこともありました。わたしがアメリカに留学したときのこと、白人のアメリカ人の先生が「ぼくは日本のことは何も知らないけれど、スキヤキソングは知っているんだ!」と教えてくれたのです。もちろん、その歌がわたしの父の歌だとは先生は知らなかったのでまずそれを伝えたときは目が飛び出そうなほどに驚いていましたが(笑)。そしてわたしは尋ねました。「なぜ言葉もわからないのにスキヤキはヒットしたの?!」と。すると先生は「もちろん、ハートで感じられるからさ!」と教えてくれました。父の歌には「こころ」がある。それも長く楽曲をうたっていただけている理由のひとつかもしれません。
 3つめは、音楽が持つ力。音楽には「音楽の神様がいる」と思わずにはいられないような奇跡をたびたび起こす力があります。わたし自身も音楽をやっていてそう感じることがありますが、父の歌が海外を含めてヒットしたこと、そしていまでも歌い継いでいただいていることには音楽の持つ大きな魔法のような力があったからだと考えています。


ーーまた大島さんがうたうときに感じる魅力はどんなこと?
 単純に飽きることがない楽曲が多いですね。そして、お客様が口ずさんでくださる曲が多いので、何よりそれがうれしいです。ライブはわたしがうたう一方通行ではないと思っています。歌を受けとってくださった方の思いや、思い出、感情、音楽を通じて歌い手と受け取ってくださるお客様が一本の糸を紡いでコンサートという作品をつくっているようなイメージでいます。そのコンサートという「編み物」をつくる上で父の楽曲はかかせないものとなっています。


夏はわたしにとって特別な季節



ーー今回のコンサートの曲のセレクトはどんなイメージでされますか?
 夏、というのはわたしにとって特別な季節です。セミの鳴き声、お盆、終戦記念日、たのしい夏休み、そして父を亡くした季節。。わたしがうたうことのテーマとしている命の輝きも、儚さも強烈に感じさせられる季節です。そんな夏に、「命」を強烈に感じる季節にうつくしい自然の中で、すばらしい音楽堂でうたわせていただけるということで、いつも行っているコンサートの集大成のようなつもりで臨みたいと思っています。ただ、ライブの選曲は最終的にはお客様の前に立ってから決めています。一期一会、そのときの感覚、思いを大切に選曲したいと思います。

photo by Michiko Yamamoto

photo by Michiko Yamamoto


ーー昨年末に発売されたファーストアルバム「柿の木坂」は完全アナログ録音だそうですね。音楽を手渡ししたいという思いやお客さんとのふれあいを大事にされている大島さんの活動と重なるような気がしますが、どんな思いから実現されたのですか?
 わたしの考える音楽とは、歌をうたうというよりも、そのときの「気持ち」を表現することなんです。そのため、長年ライブにこだわり活動をしてきました。CDにしてしまうと、気持ちがうまく伝わらないような気がしていたんです。とはいっても、もっと多くの方に大島花子を知ってもらいたい、歌を聴いてもらいたいという思いがつのり、そのときに「気持ち」を記録する方法としてアナログ録音というアイディアが出てきたわけです。
 いまではそのコストや時間、手間ばかりがマイナスと捉えられている「アナログ録音」に対して最初は反対意見の方が多かったくらいですが、実際にやってみて、ミュージシャンの方がまずその音の違いに驚かれていましたね。レコーディングのとき、録音した音を聞くためにみんな全然スピーカーから離れないんですよ。デジタルと違ってテープですから、巻き戻すことひとつとっても時間がかかる。でもその時間は
必要な時間でありそれが自然なテンポ感になっていきました。便利なことがいいこととは限らない。そんなさまざまなことに通ずることを考えさせられるレコーディングでした。実際、でき上がった音源は人の温もりのある音、気持ちが伝わる録音になったと思っています。


ーー大島さんにとって、歌うこと、歌とは?
 伝えたいことがあるから歌をうたっています。そして、歌を受け取ってくださる方がいらしてはじめて「歌」になる。わたしにとっての歌とはそういうものです。


ーー八ヶ岳の自然の中で歌うわけですが、楽しみにされていることは?

 音楽をどんな環境で聴くか、奏でるか、これはわたしにとってはとても重要です。単に物理的な環境というより、それがそのときの心の具合につながりますし、だからこそライブの意味があると思うのです。そのときそのとき、ライブにはその瞬間にしか出せない音があると思いますが、八ヶ岳のうつくしい自然、空気、気圧、そしてすばらしい音楽堂で奏でる音がどんなものになるのか、そしてどんなお客様との出会いがあるのか、わたし自身がいちばん楽しみにしているようにも思います。逃してしまうと、二度と同じものを見られない、感じられないのがライブだと思います。極上の環境でのひとときをぜひご一緒いただけたらうれしいです。


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