［聞く／entre+voir #034］月影 瞳（女優／元宝塚歌劇団・娘役トップスター）

宝塚歌劇団で娘役トップを務め、大型の商業演劇、ミュージカルなどで活躍している女優、月影瞳。２０２２月２月２３日、サントミューゼにおいて、出身地の上田市では２回目のコンサートを開催する。初めてのコンサートの会場でもあった、犀の角がプロデュースを手掛ける。文化芸術を通して故郷を盛り上げたいという思いが年々強くなっているという月影さんと犀の角との出会いは？　もちろんコンサートのことも聞いた。

2019年『月影瞳ライブ in 犀の角』より。ピアノは青柳茉莉恵さん。撮影：安徳希仁

――上田市での初めてのコンサートが犀の角でしたよね。あの時は、大劇場で活躍されている月影さんが小劇場の舞台で歌うというシチュエーションが非常に贅沢だなと感じました。犀の角との出会いから教えてください。

 
月影　代表の荒井洋文さんとは幼なじみなんです。前回は２０１９年、犀の角３周年の記念事業でしたが、おかげさまですぐにチケットが完売して、２回公演になりました。大盛況だったことからぜひ第２弾をやろう、今度はもう少し大きい会場でやろうと話していたら、コロナになってしまい、２年間も上田市には帰ってこられなかったんです。それが去る１０月に、子どもたちを対象にした演劇のワークショップをと荒井さんから声をかけていただき、やらせていただいたんです。そうしたらサントミューゼのスケジュールを押さえてくださっていて、せっかくだからやりましょうということになりました。

――コンサートのことを伺う前に、上田市のことを聞かせてください。

 
月影　生まれは上田市でしたが、いろいろな街に引っ越しをして、小学校４年生のときに戻ってきました。それから高校の途中で宝塚歌劇団に入ったんです。

――宝塚歌劇団を退団された後は東京が活動の拠点になりました。離れてみると故郷の良さがわかると言いますが、月影さんはいかがですか？

 
月影　そうなんですよ。まず人の温かさを感じます。もちろん空気も水も美味しいし、自然も素晴らしい。いつ帰ってきても受け入れてくれる場所、本当に落ち着く場所です。実は宝塚歌劇団に入る前は本当にバタバタしており、あまり当時の記憶がないんですよ。バレエに打ち込んだことだけ。高校に行ってバレエ教室に行っての繰り返しでしたから。

――宝塚歌劇団を目指そうと思われたのはいつごろですか？

 
月影　高校１年生のときに、近所の方が何かの旅行で宝塚歌劇を観て、こういう場所があるから受けてみたらと声をかけてくださったんですよ。初めて見た宝塚は天海祐希さんの初舞台だったんですけど、「こんな世界があるんだ」と思って。気軽な感じで受けてみたのですが、もちろんだめでした。当然ですよね。そこから必死に頑張って２回目の受験で合格しました。大浦みずきさんのトップお披露目のときでした。

――長野県、上田市あたりで宝塚に入るためのレッスンを受けられる教室はあるんですか？

 
月影　あまり聞きませんよね。私の場合はバレエ教室でも歌の教室でも「あなたなんか無理よ」みたいに言われて、まったく相手にしてもらえませんでした。たまたま信濃毎日新聞さんに雪組にいらした南郷希恵さんが、御代田町での高齢者のリハビリも兼ねたジャズダンス教室を開かれたという記事が出て。個人情報について大らかな時代だったから、信毎に電話をしたら連絡先を教えてくださり、面接みたいなことをしていただきました。私は高校生、当時南郷さんは宝塚を退団されたばかりで、「無理だ」と言われたことを伝えたら「それなら私がいろいろレッスンしてあげる」と、おっしゃってくださいました。そこから上田と御代田を毎日のように行き来していました。

――今も環境は整っていないでしょうから、月影さんがレッスンをやればいいかもしれません。

 
月影　いえいえ、宝塚受験は、そんな簡単に教えられません。宝塚は、宝塚独特の歌い方があります。オペラとミュージカルの中間というか。私も東宝ミュージカルに出るようになって気付きました。そういうことを伝えることはできるかもしれませんけどね。

――長野県出身のジェンヌで出世頭は、圧倒的に月影さんですから。イケますよ。宝塚で苦労したのはどんなところですか？

 
月影　とにかく上下関係が厳しいんです。だからこそしっかり育ててもらえたんですけど、当時は携帯電話もないから簡単に両親に連絡を取ることもできないし、今でこそインターネットなどですぐに調べることもできますが、上田あたりでは普通の方は「宝塚って何なの？」というような感じでした。高校も中退していますし、トップになるまで帰れないくらいの気持ちでした。故郷に錦を飾るじゃないけれど、そのプレッシャーがすごくありましたから、宝塚時代はほとんど上田には帰ってきませんでしたね。
　その後もなかなか上田とは、ご縁がなくて、相談できる人もいなかったんです。そんなところに荒井さんが劇場をオープンされたんですよね。

――犀の角の荒井さんとはそれまでにつながりがあったんですか？

 
月影　少年時代から知り合いでした。荒井さんのお姉さんと私がバレエ教室で一緒で仲が良かったんです。私が小学校４、５年のころでしょうか。お母さんと一緒にお姉さんのお迎えによく来ていて、バレエや踊りが好きだったのか、いつも私たちが踊っているのをずっと見ていました。きっとそれが荒井少年が舞台関係に進む原点だったんじゃないかな。とは言え、時を経てこうやって一緒に何かやるとは想像できませんでした。

2019年『月影瞳ライブ in 犀の角』より。左はTHE CONVOYの瀬下尚人さん。撮影：安徳希仁

急遽２回公演になるほど、客席は月影さんの帰郷を喜ぶ人々であふれた　撮影：安徳希仁

――前回のコンサートはどんなプログラムだったんですか？

 
月影　まずは私の好きな曲、そして上田市はシャンソンが盛んだと聞いて、シャンソンを入れました。あとは宝塚の曲ですね。ザ・コンボイの瀬下尚人さんにゲストとして、ご出演していただきました。瀬下もさんは今でも尊敬している大先輩です。

――上田出身の演劇人、二大巨頭です。豪華な顔合わせです。

 
月影　本当に。「いいよ、いいよ」と気軽に出てくださって、素敵なタップダンスを披露してくださいました。お客様もすごく楽しんでくださいました。

 
 

 
 
――今回は、どんな内容になりそうですか？

 
月影　前半は朗読をします。上田の民話を滝沢きわこさんが「上田・佐久の民話」という１冊の本にまとめていらっしゃって、５４話ある中から「太郎山のつつじが赤いわけ」を。それから宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の名場面をピックアップしてお届けします。朗読は「ゆたかや」さんがお衣裳を提供してくださるので、上田紬の着物を着させていただきます。休憩を挟んだあと、後半は歌わせていただきます。今回はゲストにミュージカル俳優の高原紳輔さんをお招きして、「これぞミュージカル」という歌を披露する予定です。

――高原さんとはどこかで共演されているんです？

 
月影　共演は今回が初めてですが舞台も拝見していますし、素晴らしい方です。徳島出身でいらしてご自身も地域貢献の活動をされているみたいで、「ぜひやりたいです」と言ってくださったんです。ピアニストの青柳茉莉恵さんは、前回も弾いてくださいました。

――曲はどんな内容になりそうですか？

 
月影　まだ思案している最中ですけども、シャンソンとミュージカルを中心に、もちろん宝塚の曲もやろうと思っています。今回は、お子さまを６４人ご招待するんです。だからお子さんが喜んでくれそうなディズニーのミュージカル・ナンバーを。幅広い年齢層のお客様がご来場くださるので、多くの方がご存じで、楽しんでもいただける曲をと考え始めたら、すごく悩んでしまいました。２０２２年は退団して２０周年でもありますから、初舞台だった『ベルサイユのばら』なら皆さんわかるし、取り入れようかなって思ってます。

――コンサートを見たお子さんの中から、宝塚歌劇団を目指す子が出てきたらうれしいですよね。

 
月影　そうですよね。２０１９年に上田市文化センターで講演をしたのですが、それを見てから宝塚歌劇団を受験して合格した方もいらっしゃるから、少しは貢献できているのかなって。私もキャリアを重ねる中で、私なりに上田市が元気になるように、地域貢献したいなと思います。上田市の文化芸術が発展していく上での担い手の一人になれたらいいなって思っています。コンサートをその一歩目にしたいですね。
 

 
 

月影瞳コンサート「Home coming」

出演：月影瞳、高原紳輔、青柳茉莉恵（ピアノ）
構成・演出・美術：石井幸一（鎌ヶ谷アルトギルド）

《プログラム》
第１部　上田に伝わる民話や物語の朗読
　　　　「太郎山のつつじが赤いわけ」（作：滝沢きわこ）
　　　　「銀河鉄道の夜」（原作：宮沢賢治）
第２部　シャンソンや宝塚の名曲コンサート

《日時》
2月23日（水・祝） 14時開演（13時開場）
※上演時間：約120分（途中休憩20分）

《会場》
サントミューゼ　上田市交流文化芸術センター　小ホール

《チケット》
S席：8000円　/　A席：6000円
18歳以下：無料招待（64席限定・窓口販売のみ）
※全席指定
※子ども無料招待分チケットは窓口のみの取り扱いになります。
※無料招待枠のお子様につきましては受付時に学生証や身分証など年齢の分かるもののご提示をお願いいたします。

《Twitterアカウント》
@Homecoming0223
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