企画展「康花 絵の旅路2-青春-」

自画像(1995)

 30歳で亡くなった女流画家・須藤康花(すどうやすか)を記念して2012年に開設された康花美術館。ひたすら生きることを見つめ、光と闇が交錯した独自の世界を鉛筆・木炭・水彩・版画・アクリル・油彩で描き、作品は心象風景、人物、風景、自画像等多岐にわたります。死後に見つかった1000点近い絵画や詩作・散文には、たえず死と対峙しながら自らの世界を模索し続けた、夭折画家の凝縮した世界が塗りこめられています。

「康花 絵の旅路2-青春-」は、昨年から始まった「康花 絵の旅路」シリーズの第2弾。
『自死を乗り越えた作家が綴り描く作品たちは何を語っているのか』 須藤康花10~20代初めの絵画と詩作60余点を展示します。


最高の贅沢

いい季節になりました
白樺の木には淡い木の葉の色が染まり
タンポポも顔を出し始めました
空にも澄んだ優しい青色が戻ってきました
ひんやりと心地いい夕方が帰ってきました
そのうち 後もう少ししたらもくもくした
あの白い入道雲やミンミンとせわしないセミたちや
ふさふさとした重そうな濃緑の木々たちや
それをくねらせるかげろうや
ランニング姿の少年たちや
伸びるだけ伸びた元気のいいひまわりたちも
姿を見せることでしょう
ときには ひぐらしの声も聞こえるかもしれません
そんな日には風鈴を出して
かすかな風の音色を聞きながら
うちわでも片手に薄着をしてぼんやりとしてみたいです
最高の贅沢ではありませんか

強い雨の日には少し無理をして半袖で外に出て
傘をわざとずらしたりして
素肌の腕に雨の露を流れさせて あてもなく
蛙の鳴き声を探しに行くのも
これまた最高の幸せではありませんか
そして雨上がり ぴかぴか光った
道を 誰もいない道をたった一人で
小鳥の声なんぞを聞きながら
一緒に鼻歌を歌ったりして
葉っぱの雨のしずくをそっと手で触ってみたりして
清清しい空を眺めて
ハンカチでそっとベンチの水を拭いて腰掛けて
じっと座っているのも これまた最高の贅沢
ではありませんか

ビーチサンダルを素足ではいて
麦わら帽なんぞをかぶって
いくら歩いても 浮き浮きしたまま
そんな時は
いつくるのでしょう  

(1994年5月6日 15歳)




インフォメーション

日程2019年4月3日(水)~8月25日(日)
会場康花美術館
時間10:00~17:00(入館は16:30まで)/月・火曜日は休館
チケット料金一般(高校生以上)500円/小中学無料 ※団体・障害者割引等あり
詳細ホームページhttp://yasukamuseum.web.fc2.com
お問い合わせ先康花美術館 Tel.0263ー31ー0320