『長野A(アート)ターン』①

Introduction: mikibar のなりたちのことなど~

 今にして思うと、かつてのわたしは地元にかなり縁遠い人間でした。

 大学進学以来東京で過ごしていた20代の頃、地元の岡谷に帰りたくない一心で、盆暮時にわざわざ出張を入れたりして。その頃、わたしにとって、東京-岡谷間は、とても距離が長く感じられたものでした。その感覚が一転したのは、実はここ数年のことです。最近ではむしろ、できることなら毎週末帰省したいと思う程になっているのですから、人間というのは不思議なものです。

 そしてその変化は、恐らくわたしがアート(美術界)の小さな扉を開けたことから始まったのだと思います。

 数年前、わたしはふいに学芸員の資格をとろうと思い立ち、仕事の傍ら、武蔵野美術大学(ムサビ)通信過程で学ぶことにしました。その後、日本橋にあるアート系NPO団体のインターンスタッフとなり、その顛末をSNSを通じて知っていた高校の同級生(オノウエ印刷のゆきこさん)から「諏訪でも何かやったら?」と、イルフ童画館さんを紹介され。それがきっかけで童画館や『諏訪湖周まちじゅう芸術祭』などのイベントのお手伝いし、そうするうちに、アートの枠を超え岡谷・諏訪のひと、ばしょ、こと・・・と、どんどん関わる範囲が広がってきたのです。

 “ひと”についてパッと思いつくだけでも、イルフ童画館のスタッフの方々やサポーターの皆さん、『だもんで』の仲間、『たのしの森市』実行委員でもあるnuno*ito asobiの高倉美保さん、そして諏訪のBlue Line Garage Cafe 18の増沢店長・・・と片手で数えるだけでは足りなくなるほどの交流拡大。
 気が付いたら、ひたすら遠く感じていた東京-岡谷間が、距離を感じさせない程に近くなってきていたのです。

 そんな現在ですが、わたしには将来叶えたい1つの夢があります。将来、自分の店(BAR)をもち、そこを《自分の好きな/気になるもの・こと・ひと・ばしょをつなげたり、ひろめたりする場》にしたいという夢です。その“練習”と称し、現在「社員食堂Lab.(東京・日本橋)」「シャトー2F(東京・小金井)」、そして「だもんで(岡谷)」などの場所を借りて、移動式のイベント・バーを展開しています。それがわたしが肩書きとして使っている’mikibar’です。

 今これを書きながらふと思い出したのですが、わたしのムサビでの卒業制作(卒論)は、『アート・イベントを媒介とした<まちおこし>の一考察』というものでした。卒論の総評の際、担当教授・田村裕先生から「林さんの卒論は、どちらかというと今後の活動が本論になるようなものだ」と言われ、そうなのかしら?と思っていましたが、それから約2年過ぎてみると、本当にそのとおりになっているのです。
 こんな感じで、簡単ながらわたしの自己紹介をさせていただきました、第1回目。次回からは、このような活動や日々を通じて出会った、<東京のなかの長野アート>を紹介していきたいと思います。末尾のmikibar用語集は、とても主観的ですが、そちらも併せてお楽しみいただけたらと思っております。

 これから、どうぞ宜しくお願い致します。

[mikibar用語集(mikibar主観で書いております)]

オノウエ印刷:
 諏訪地域、或いは県内だけでなく、そのクオリティでアート業界にもその名が知られている印刷会社。同級生の中村オノウエゆきこさんは、現在、同社の印刷通販事業課長。
公式HP http://www.op-onoue.co.jp/

イルフ童画館:
 「童画」という言葉をつくったと言われる、童画家・造本作家・版画家・郷土玩具コレクターの武井武雄作品をコレクションする美術館(岡谷)。毎週末のワークショップ(ほぼ無料)は、学芸員さんやサポーターの皆さんのすてきなアイデア満載で、毎回内容が異なり、子どもだけでなく大人も楽しめるようなものとなっている。本当に、近くに住んでいたら毎回参加したいものばかり。併設の喫茶ラムラムのスタッフが作る、企画展作品をイメージしたスイーツも見(食べ)逃せない。
公式HP http://www.ilf.jp/

諏訪湖周まちじゅう芸術祭:
 今年で6回目になる諏訪のアートイベント。諏訪湖一周はたった16kmしかないのに、そのまわりに点在する美術館・博物館(諏訪・下諏訪・岡谷)は17もあるというアートな盆地。期間中は、それこそまちじゅうがアートで彩られ、17ミュージアムを共通パスポートでお得に巡ることができる。夜までアートを堪能できる「諏訪の長い夜」から芸術祭は始まる。参考までに今年(2015年)のスケジュールはこちら。2015/8/28-9/23(うち「諏訪の長い夜」=2015/8/28&29、2015/9/19~21)
公式HP http://suwako-art.jp/

だもんで:
 岡谷市内に住む同世代の男性4名で立ち上げ、そこに徐々に楽しい仲間が増えていきつつある、そんなメンバーによる岡谷を楽しくする活動。活動拠点は中央通りにあり、岡谷をさまざまな切り口で楽しむ部活「岡谷○○部」の活動拠点にもなっている。○○部は現在すでに36もの部数を数えるほどに成長・増幅している。
Facebook https://www.facebook.com/okaya.damonde?fref=ts

たのしの森市:
 かつて岡谷の若者たちの憧れの場所だった駅前商業施設《ララ岡谷》での2日間マルシェ。「クラフトの森」「食べるの森」「いやしの森」に分かれ、ふだん点在しているあの店、この人の作品やサービスが一堂に楽しめる機会。わたしはここでmikibar茶席を開かせて頂いた。出店者にとっても、出会いの機会がひろがる場所。今年11月下旬には第4回目が予定されている。

nuno*ito asobi(ぬの*いとあそび):
 岡谷在住のクラフト作家・高倉美保さんのブランド。ときにブキミ、そしてちょっとへんてこな顔の人形や小物、バッヂなどを制作する。また『たのしの森』市の主催のひとりとなるなど、岡谷の<要>的な人である。しかしその活動は岡谷・諏訪にはとどまらず、一昨年の『空中キャバレー』(まつもと市民芸術館)での出店や、松本市内のショーウィンドーのディスプレイなど、活動範囲はどんどん広がっているこのごろ。
公式blog http://ameblo.jp/nunoitoasobi/

Blue Line Garage Cafe 18(ブルーラインガレージカフェ18):
 もとは下諏訪の下社附近にあったRic-cafe’(リッカフェ)。昨年2014年11月より諏訪の、車でないと行かれない少し不便な場所へ移転。名前もさらに長く複雑になった。が、しかしその連日の混み様は、そんなハードルをものともさせない。恐らく店主増沢さんのゆるさ、興味の幅の広さ、そして珈琲の美味しさに起因しているような気がする。8月8日にはここで「ライヴとマルシェと花火大会」のイベントを企画中。
Facebook https://www.facebook.com/bluelinegaragecafe?fref=ts

社員食堂Lab.:
「みんなでつくる、たべる、かたづける」を合言葉に、2011年秋より日本橋のシェアビルCreative Hub 131にオープンした会員制コミュニティ・キッチン。定期的なごはん会(第1・3火曜日夜の‘食堂パルプンテ’、毎週金曜の‘おつかれさま食堂’)などのほかに、イベント(食にちなんだワークショップや、上映会、アート企画、パーティ)も不定期に行っている。私自身もここのメンバーで、mikibar(肩書:日本酒/企画/まきこみ担当)として活動している。「新しいつながりと、次へのきっかけを生み出す場所」と語るのは、代表の伊藤さん。言い得て妙。
公式HP http://shineshokudo.com/

社員食堂Labo

社員食堂Labo

シャトー2F:
 わたしの今の地元、東京都小金井市にあるカフェ&ギャラリースペース。築40年を超えるマンションの一角にある、細長く、白く、そこかしこに過去にかかわったアーティストの作品が隠れている不思議な空間。広いギャラリースペースは、現代アートの企画展/ワークショップが開催されていることが多いが、時に芝居の舞台や、ライヴ会場にもなる。個性的なカフェスペースでは、平日は小金井など地元野菜をふんだんに使ったメニューが味わえ、また夜には、アート、音楽やトークを楽しむ小金井の面白い老若男女が集ってくる場所にもなる。スペースを運営している芸術文化振興NPOアートフル・アクションの事務局もあり、小金井につながりを持ちたい人が訪れるには、最適のスペース。
公式HP http://www.chateau2f.com/ 

シャトー2F

シャトー2F

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