「たのしい辺境」

　「工芸」といえば、暮らしに役立つ「道具」のことがすぐに思い浮かぶと思います。でも、それとは違う、あまり役には立たないけれど、それでも身近にあるだけでなんだか「たのしい」と思えるような、例えば海岸で拾った石ころのようなものも、実はそのなかに含まれているのです。

　それを「無用の用」などといいますが、確かにわたしたちの社会でも、まじめな働き者ばかりでは息が詰まりますし、あまりたのしい雰囲気にならないでしょう。そうした時、ちょっと道化たひとであったり、普段は無用と思われたひとが俄然その存在感を増してくることがあります。無用の用は、そんな役割を担っているのです。

　ものとひとの関わりは、時代によって変化しています。戦後の日本のように生活必需品が不足していた時代には、実用の価値が最優先され、具体的に役に立つことがひとびとの望みでもありました。でも今は社会が成熟し、物質ではなく、心の満足を求めるようになりました。わたしたちは親密で、魂にひびくものを、そばに置きたいと思っているのです。

　実用と無用、工芸とアートの境界線に生きる６人の作家たちの、可能性に満ちた「たのしい辺境」へ、ぜひ遊びに来てください。

【参加作家】
三谷龍二　吉田次朗　ナカオタカシ　岩谷雪子　恩塚正二　熊谷幸治

【関連イベント】
熊谷幸治の土器ワークショップ
　土をこねるところからはじめ、野焼きで土器を作ります。
▽日時：４月２９日（金）１０時〜／１３時〜、５月８日（日）１０時〜
▽会場：三谷工房
▽参加費：5,000円
▽申込み：10cm メールwood@10.biz

ドラゴンコーヒー店
　オオヤミノル＋なかむらるみ
▽日時：４月２９日（金）１1時〜18時
▽会場：10cm青空カフェ